「もっと強くスイングしたい」「どうしたらジャンプ力を上げられる？」「早く走るには？」スポーツをしている人は一度はそう思うのではないでしょうか？
その答えの一つとして【SSC（ストレッチ・ショートニング・サイクル】という仕組みです。聞き慣れない言葉かもしれませんが、実は私たちの日常生活の中でも無意識に使っています。今回は、このSSCについて、スポーツをしている学生や、大人の方まで、誰でも理解できるようにまとめてみます。
SSCとは？
SSC【Storetch Shorteinng Cycle】
SSCは「Stretch Shortening Cycle（ストレッチ・ショートニング・サイクル）」の略です。日本語にすると「伸張－短縮サイクル」という意味です。
人は力を出すとき、筋肉を「伸ばしてから縮める」動きをすると、より大きな力を効率よく発揮できます。例えば、ジャンプをするときに一度しゃがんでから飛び上がるのを思い浮かべてください。しゃがむときに太ももの筋肉は一度「伸び」ます。その後すぐに「縮む」動作に切り替わることで、より高く跳べるのです。
もし、しゃがむことをせずにいきなり飛び上がろうとしたらどうでしょうか。力が入りにくく、思ったほど高くは跳べないはずです。これがまさにSSCの働きです。
SSCの仕組み
なぜSSCが【効率よく強い力】を生むのかは大きく分けて次の3つの仕組みが同時に働くからです。以下で一つひとつわかりやすく説明してみます。
筋肉・腱に蓄えられる「弾性エネルギー」
筋肉や腱、その他の結合組織はゴムのような性質を持ち、伸ばされるとエネルギーを解放します。これが弾性エネルギーです。
例としてジャンプの「しゃがむ」局面では、太ももやふくらはぎの筋肉・腱が一時的に引き延ばされます。その直後に素早く縮むと、伸張時に蓄えたエネルギーが追加の反発力として働くため、単に筋肉を縮めるだけよりも大きな力が出せます。ポイントとしては「伸張とタイミング」です。伸張されたエネルギーは時間が経つと失われやすいため、素早く短縮に移るほど有効です。
伸張反射（筋紡錘を介した即時の筋収縮）
筋肉が急に伸ばされると、筋肉にあるセンサー（筋紡錘）がその伸びを感知し、脊髄を介して即座に筋に「縮めろ」という指令を出します。これが伸張反射で、非常に短い遅延で起こるため、速く強い収縮をサポートします。
病院で膝をトントンと叩くと脚がピンと伸びる反応を見たことがあるかもしれませんが、あれが伸張反射の一例です。SSCでは、この反射がエンジンのように動き、短い時間で大きな出力を生む手助けをします。ただし反射は自動的な反応なので伸張が急すぎたり不適切な姿勢で行うと筋や腱を痛めるリスクもあります。
神経-筋の強調性
SSCの効果は「物理的な反発」や「反射」だけで決まるわけではありません。脳と神経がどれだけ速く、適切に筋を使えるかが大きく関わります。これを筋-神経筋の協調性と言います。
具体的には、適切な筋群が適切な順序で、適切な強さ・速さで動くこと（例 着地時に股関節→膝→足首の連動がスムーズに行われる）や筋の前もっての準備（プレアクティベーション）が重要です。プレアクティベーションとは接地前に筋が軽く緊張していて、受ける衝撃に備えることで、伸張反射や弾性エネルギーを効率よく利用できる状態のことです。
神経ｰ筋の強調性が高まると、同じ筋力でもより早く、効率よく力に伝えられるため、パフォーマンスが向上します。逆に強調性が低いとエネルギーが分散してしまい、力が逃げてしまいます。
わかりやすい例
デコピン
①指を後ろに引く動き（ストレッチ）…ゴムを引っ張るように筋肉や腱にエネルギーが溜まります。
②溜めた指の力を一瞬留めておく（保持＝蓄積の時間）…筋肉や腱に弾性エネルギーが蓄えられている状態
③一気に前に弾く（ショートニング＝収縮）…溜めたエネルギーが解放されて強い力が発揮される
つまり「デコピンの威力」はただの指の力だけでなく
弾性エネルギー・伸長反射・強調した素早い切替の組み合わせによって生まれているということです。
危ない！と思ったとき
私たちの体は「危ない！」と感じたときに無意識に素早く反応します。
例えば、熱いものを触った瞬間に考えるよりも先に手を引っ込めます。これと同じように筋肉も急に伸ばされると「切られないように」と無意識に収縮する反応をします。これが伸張反射であり、SSCではこの反射が力発揮のスピードをさらに高める役割を果たしています。
しかし、【伸張反射だけでは小さな力しか生まれない】です。切られないようと反射で縮むその力では防御反応レベルです。そのため伸張反射単体では競技で使えるほどのパワーは出ません。
階段を上るとき
足を一段あげる前に、膝を軽く曲げて体を沈める動作をしています。この「沈む→伸びる」の流れがSSCです。よりスムーズに体を持ち上げることができます。
椅子から立ち上がるとき
座ったまま一気に立ちあがろうとすると力が入りにくいですが、少し前傾して膝を曲げてから立ち上がると自然に体が持ち上がります。これもSSCを活用しています。
ジャンプ動作（遊びやスポーツなど）
子どもがトランポリンなどで跳ねる時や、大人が荷物を高いところに置く時などに一度しゃがんでからジャンプします。直立からそのまま飛ぶより、はるかに高く飛べるのはSSCのおかげです。
ボールを投げる時
野球やキャッチボールだけでなく、買い物袋を車に放り投げる時も、一度腕を後ろに引いてから降り出します。腕の筋肉や肩の腱が「伸びて→縮む」ことで勢いがつきます。
物を持ち上げる時
重い段ボールを持ち上げるときに、膝を軽く曲げて沈み込み、そこから一気に立ち上がる動作はSSCそのものです。
歩く・走る時
実は、一歩一歩の動作にもSSCが働いています。着地で足首やふくらはぎの筋肉が伸び、その反動を使って次の一歩を蹴り出しています。
ドアを強く押す時
押す前に自然と腕を引いて、体を少し後ろに引いてからグッと前に押しだします。これもSSCの利用です。
まとめ
SSCは、
• 筋肉や腱にたまる「弾性エネルギー」
• 瞬間的に筋肉を縮める「伸張反射」
• そしてそれらをうまく連携させる神経の働き
この3つが合わさることで、爆発的な力を生み出す仕組みです。
伸張反射だけでは小さな力にとどまりますが、弾性エネルギーを効率よくため、解放することで、大きなジャンプや素早いダッシュにつながります。
SSCを理解したうえで大切になるのが「どうトレーニングで活かすか」です。
ジャンプやスプリント動作に直結する具体的なトレーニング例をご紹介するコラムも掲載予定です。
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・aLLパーソナルジム 清澄白河 パーソナルトレーナー金子 竜太
資格
- NSCA―CPT
aLLパーソナルジム 清澄白河 パーソナルトレーナー 金子 竜太メッセージ
大手フィットネスクラブやパーソナルジムでトレーナーとして年間1000セッション以上のボディメイクを中心に指導中。自身でも－17㎏のダイエットを行いフィジーク大会にも出場。様々なメカニズムと経験を元に指導していきます。
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